イノベーションのジレンマ
- 英語
- The Innovator's Dilemma
ハーバード・ビジネス・スクール教授のクレイトン・クリステンセンが、1997年に初めて提唱した理論で、優良企業の優れた経営者が健全な意思決定をすることが、その企業を失敗へと導き、巨大企業が新興企業の前に力を失う理由を説明した企業経営の理論。
クリステンセンは、優良企業の優れた経営者が健全な意思決定をすることがその企業を失敗へと導く理由を著者は以下の5つを挙げている。
- 企業は顧客と投資家に資源を依存している
破壊的技術は初期においてはごく一部の特殊な顧客にのみ必要とされるだけなので、既存顧客や短期的利益を求める株主の意向が優先され、破壊的技術へ取り組むことが出来ない。
- 小規模な市場では大企業の成長ニーズを解決できない
破壊的技術は初期においては小さな市場規模しかなく、大企業にとっては参入の価値がないように見える。
- 存在しない市場は分析できない
優良な大企業は市場を分析して合理的な意思決定をする能力を保有しているが、イノベーションの初期では不確実性も高く、現存する市場と比較すると、参入の価値がないように見えるため、破壊的技術へ取り組む機会を逸する
- 組織の能力は無能力の決定要因になる
組織の能力とは「仕事のプロセス」と「価値基準」によって決まるが、プロセスと価値基準には柔軟性は無いため、既存事業を営むための能力が高まることで、異なる事業が行えなくなる。
- 技術の供給は市場の需要と等しいとは限らない
確立された市場では魅力のない破壊的技術の特徴が、新しい市場では大きな価値として認識されることがあり、確立された市場を正しく判断する優良大企業には、破壊的技術を採用することは困難。
このような結果、以下のようなことが起こる。
優良企業は顧客のニーズに応えて持続的イノベーションに注力し、ニーズのない破壊的イノベーションを切り捨てる
→それにより顧客のニーズは満たされるが、ある段階まで到達すると、顧客は他のニーズに目を向け始める
→破壊的イノベーションの存在が無視できない力を持つようになる
→他社の破壊的イノベーションの価値が市場で広く認められた結果、優良企業の提供してきた従来製品の価値は毀損
→優良企業は自社の地位を失う