代替取引システム
- 英語
- alternative trading system
- 同意語
- ATS
- 関連語
- ダークプール , ECN , レギュレーションATS , レギュレーションNMS , NMSプラン , MiFID , クロッシング・ネットワーク , MTF
証券取引所以外のダークプールをはじめとした私設取引プラットフォームのことで、当初は私設取引システム(PTS:Proprietary Trading System)と呼ばれていたが、1998年のレギュレーションATSで、名称を代替取引システム(ATS:Alternative Trading System)に変更し、そのうち価格発見機能をもつものを電子商取引ネットワーク(ECN:Electronic Communications Network)とし、規制対象に加えられた。最近ではダークプールとほぼ同義で用いられることも多い。
また、欧州ではEU指令(MiFID)において規定される代替取引システムと同様の取引システムのことを、多角的取引システム(MTF:MultilateralTrading Facility)と呼んでいる。
代替取引システム(ATS)は、法的には取引所の定義に該当することとなるが、レギュレーションATSの規制に服することで取引所免許の取得義務から免除されるという体になっていて、レギュレーションNMSの対象外となるため、気配情報は世間一般には公表されない(NMSプランを通じて配信される統合気配情報に含まれない)という特徴を持ち、約定情報も事後的にしか把握できない情報の不透明性さがある(レギュレーションATSでは、一定以上のシェア(過去6か月のうち4か月以上についてある銘柄の全米一日平均売買高の5%以上)を有するATSに対して気配情報を公表を義務付けているが、個別銘柄5%強制公表基準に抵触するほど大きなATSは存在せず、ECNにおける気配公表は実質的に全てボランタリー・ベースで行われている)。
2001年にティック・サイズを従来の16分の1ドル単位から100分の1ドル単位(0.01ドル=1セント)に変更したデシマライゼーション(Decimalization)による急激なティックサイズの縮小によって板の流動性が減少し、既存の取引所市場での大口注文の執行が困難になり、マーケット・インパクトを回避するため匿名性を売りとする大口注文に特化したATSに流れたことや、2007年10月のレギュレーションNMSの導入による市場間競争が激化する中、各取引所は自市場への流動性喚起のために、メイカー・テイカー手数料(テイカー・フィー)モデルを導入し取引コストが上昇したため、機関投資家が手数料が低廉なATSの利用するようになったことで、ATSの取引シェアが拡大し、取引のかなりの割合を提供するようになってきていて、取引所自身も対抗上、同様なシステムを提供するようになっている。
ATSは元々は、マーケット・インパクトを回避するために利用される大口注文の執行市場(クロッシング・ネットワーク)という色合いが強かったが、テイカー・フィーを回避するといった目的で、ATSの利用が拡大してくるにつれ、ATSにおける注文の小口化が進展し、ATSの取引のほとんどは、取引所市場と同様、小口注文によって行われていて、その性格は初期とは異なってきている。
ATSのうちECNは市場の本来の機能である価格発見機能を持つが、それ以外のクロッシング・ネットワーク)という色合いが強かったが、テイカー・フィーを回避するといった目的で、ATSの利用やダークプールは、マーケット・インパクトの回避に力点を置き、市場の本来の機能である価格発見機能を既存の市場に任しているという特徴があり、これらのルートを通じた取引が増えると、既存の価格発見機能を担う市場で形成される価格情報の質が低下する矛盾という矛盾を孕んでいる。