ポンド危機
- 英語
- pound crisis
1992年秋に発生したイギリスの通貨であるポンドの為替レートが急落し、ERMから事実上離脱を余儀なくされた一連の出来事のこと。
1990年のドイツ統一以来、旧東ドイツへの投資増により、欧州の金利は高めに推移し、イギリスは経済低迷にも関わらず、ポンドは過大評価されていた。これに目をつけ『イギリスは通貨を切り下げ、EMS離脱に追い込まれる』と予測したジョージ・ソロス率いるヘッジファンドのクウォンタム・ファンドが、ポンドを売りの標的にし始め、イングランド銀行は外貨準備高を取り崩し、ポンドの買支えを行った。しかし、9月15日にはEMSで定められている変動制限ライン(上下2.25%)を超え、イングランド銀行はこれに対抗して、翌16日には公定歩合を10%から12%へ引き上げ、さらに数時間後には15%へ再利上げするが、ポンド売りを止められず、この日3度目の公定歩合変更で10%へ利下げし、低金利政策に転換することで、ERMから事実上離脱し(正式な脱退は9月17日、)、変動相場制へ移行した。
ポンド危機は、ヨーロッパの他の通貨にも飛び火し、欧州通貨危機となり、ERM解体の危険にさらされた。