キプロス危機
- 英語
- Cyprus crisis
- 同意語
- キプロス・ショック
2013年のユーロ圏によるキプロスへの金融支援において、支援条件として預金者負担を導入することを2013年3月16日にキプロス政府とユーロ圏側が合意したことに始まる金融危機のこと。
キプロスは観光以外に主要産業がなかっため、高金利と低税率を武器とした金融立国(オフショア金融センター)を目指したことがあり、ロシア等海外からタックスヘイブンとして多くの資金が集まり、GDPはユーロ圏全体の0.2%の小国に過ぎないものの、銀行資産はGDPの約8倍、預金残高は約4倍に達しており、金融機関があまりに巨大になりすぎていた。また、歴史的にキプロスは、住民の大半がギリシャ系(公用語もギリシャ語)で、ギリシャとの結びつきが強い。
そうした中でギリシャ危機により、キプロスの銀行の融資や債券投資に巨額損失が発生して経営が立ち行かなくなり、EUに支援を要請したが、EUに最大100億ユーロの金融支援の実施条件として、同国の銀行の預金者に対して異例の措置(10万ユーロ超の預金からは9.9%、それ以下は6.75%の課徴金を1回に限って徴収、総額58億ユーロ)が付けられたため(キプロス議会で否決)、取り付け騒ぎが起きる等大混乱に陥った。最終的には大手2銀行(キプロス銀行とライキ銀行)を整理・再編し、10万ユーロ超の大口預金者に破綻処理費用の負担を強いるという内容で合意(2013年3月25日)し、金融破綻は回避されたが、同国の金融立国としての経済モデルは破綻することになった。
厳しい支援策なった背景として、キプロスの銀行資産の約3分の1がタックスヘイブンを利用したロシアマネーで、またマネーロンダリング疑惑もあったことから、救済する側のドイツ等が厳しい支援策を主張したことが挙げられる。
キプロスはGDPはユーロ圏全体の0.2%で、債務残高も約170億ユーロといった小国であり、同国の金融危機は、規模で見る限りは大きな問題ではないが、金融支援の実施条件に預金者負担を求めたことから、ユーロ圏では10万ユーロまでの預金は保証されるという制度理念が崩れ、預金者負担という手法が前例になるのではないかという不安を与えることになった。
また、預金口座に課税するために預金封鎖をしたことで、キプロス国民が国家権力の及ばないビットコインへ資産を移す動きが増え、ビットコインへも注目が高まることとなった。