共通農業政策
- 英語
- Common Agricultural Policy
- 同意語
- CAP
- 関連語
- ウルグアイ・ラウンド , 黄の政策
欧州連合(EU)における農業補助に関する制度や計画を扱う域内共通の政策のことで、共通市場設立、生産力増強を図るためには域内での調整が必要であるとの考え方から1962年に導入された。
農業者の所得を保障するための価格・所得政策、農業部門の構造改革、農業環境施策等を実施する農村振興政策の二本の柱から成り立っていて、財政負担の増大、ウルグアイ・ラウンド農業交渉、WTO農業交渉への対応等の観点から、1992年、1999年、2003年、2008年に政策の見直しが行われ、さらに、2013年には農業の公共財としての役割強化の観点等から見直しが行われた。
価格・所得政策
- 価格支持(最低価格の保障)
作物別に支持価格を定め、市場価格がそれを下回った際に、EU加盟国の機関が買い支えを実施。(対象:小麦、大麦、トウモロコシ、コメ等の穀物、牛肉、バター、脱脂粉乳)
- 直接支払い(農業者の収入の保障)
1992年に、価格支持制度における支持価格の引き下げによる農業者の所得減少を補填するために、農業者に対する直接支払いを導入。
CAPの改革
- 1992年改革
生産過剰、輸出補助金等の財政負担の増大、ウルグアイ・ラウンド農業交渉(輸出補助金の削減、黄の政策の削減)への対応
- 支持価格の引下げ
- 支持価格引き下げ分を補償する措置として、直接支払いを導入(品目ごとに決められた支払い単価をもとに、作付面積等に応じた支払い(カップル支払い))
- 直接支払いの受給要件として休耕を義務づけ
- 1999年改革(アジェンダ2000)
中東欧諸国のEU加盟に備え、EU農業の国際競争力(特に価格競争力)の強化
- 価格支持から直接支払いへのシフトの強化
- 直接支払いの受給要件としてクロスコンプライアンスを導入(加盟国の判断により実施)
- 農村振興政策の強化(CAPの第2の柱として確立)
- 直接支払予算を削減し、農村振興政策予算に財源を移転するモジュレーションの導入(加盟国の判断により実施)
- 2003年改革
WTO農業交渉(「青の政策」に位置付けられている生産にリンクした直接支払を「緑の政策」にシフトする必要等)への対応
- 品目によらない単一直接支払いの導入(支払いを生産と切り離し2000~02年までの受給実績を基に支払い(デカップリング))
- 価格支持の更なる削減と直接支払いの拡充
- クロスコンプライアンスの遵守事項を拡充し義務づけ
- モジュレーションを義務づけ
- 2008年改革(ヘルスチェック)
- 直接支払いは原則として2010年から生産リンク支払いを廃止(デカップリングの徹底)
- 義務的休耕の廃止
- 価格支持(市場介入)の縮小
- クロスコンプライアンス適用範囲の見直し
- モジュレーションの強化
- モジュレーションの強化による資金を、気候変動、再生可能燃料等の新たな政策課題への対応に重点的に配分
- 2013年改革
財政削減、農業の公共財としての役割強化、直接支払の格差是正
- 直接支払い制度の全面的見直し(環境要件の強化等)
- 加盟国間の直接支払いの単価の不均衡是正
- 農村振興政策における環境対策の強化
- 従来のモジュレーションに代わり、価格・所得政策(第1の柱)と農村振興政策(第2の柱)の間の予算の弾力化