VaR
- 英語
- Value at Risk
- 同意語
- バリュー・アット・リスク
- 関連語
- 金融検査マニュアル , バーゼルII , オペレーショナル・リスク , テール・リスク , バーゼルIII , 期待ショートフォール
過去一定期間(観測期間)の金利、為替、株式等の市場の変動データに基づき、現在保有している資産(ポートフォリオ)を、将来のある一定期間保有すると仮定した場合に、ある一定の確率の範囲内(信頼区間)で、市場の変動によって、どの程度の損失を被る可能性があるかを統計的に推定した市場リスクの予想最大損失額の指標のこと。ポートフォリオが多様な金融資産で構成されている場合でも、一定の確率における予想最大損失額という共通の尺度で比較・管理することが可能であることから、リスク管理において非常に便利である。
例えば、あるポートフォリオについて、その保有期間を1日、信頼区間を99%としてVaRを計算すると、その保有期間中に、このポートフォリオの評価損失がVaRの金額を越える確率は1%ということになる。また、金融機関のトレーディング勘定におけるマーケットリスク規制では、観測期間1年以上、保有期間10営業日以上、信頼水準99%が要件とっている。
Varは、1990年代初頭から欧米の金融機関で利用され始め、日本でも、1993年に発表されたマーケットリスク規制における内部モデルとしてのVaR手法の採用、金融検査マニュアルにおける内部管理への市場VaRの利用の明示等の規制・監督の強化の流れに応じて、メガバンク・大手金融機関から地域金融機関まで広く普及した。また、バーゼルIIにおいては、統合リスク管理(経済資本管理)が導入され、信用リスクに信頼水準99%、保有期間1年のVaR、市場リスクに信頼水準99%、保有期間6ヶ月、観測期間3年のVaRが採用され、市場リスクのみに留まらず信用リスク及びオペレーショナル・リスクといった定量化に適したリスク全般においてもVaRの手法を利用した管理が広がっている。
VaRは、特定のリスクファクターの観測期間における過去の市場変動データをもとに計測されるため、証券化商品のようにリスクファクターの特定が難しい商品のリスク、市場流動性リスクのように市場で観測することが難しいリスクファクターに起因するリスク、さらに、リーマンショックのような100年に一度といったストレス状態に陥るリスク(テール・リスク)を適切に捉えることができないといった限界があり、このVaRの限界を補完するために、バーゼル2.5では、従来のVaRにストレスVaR(過去のストレス期間のシナリオを反映したVaR)を加算する方法が採用され、バーゼルIIIにおいては、テール・リスクをより適切に捕捉する指標として、VaRから期待ショートフォール(ES)へ移行した。