ロンドンの鯨
- 英語
- London Whale
- 同意語
- ヴォルデモン
JPモルガン・チェースの預金から融資を差し引いた保有資産(約3600億ドル)のリスク管理を手がけるCIO(チーフ・インベストメント・オフィス)のクレジットデスク責任者であるフランス人敏腕トレーダーのブルーノ・イクシル(Bruno Iksil)氏の異名で、米国企業125銘柄のバスケットで構成されたMarkit CDX Series9というCDSが世界有数の銀行の本部機能による巨額の売りに押されて、公正と思われる価値を大きく下回る推移が続いていたことから2012年頃から市場関係者から注目され、過剰なリスクを取り、CDS市場を大波で揺らすような売買を行い、毎年数億ドルもの利益を叩き出していたことから名づけられ、「バーナンキ氏が国債マーケットにおける地位と同じく、ブルーノ・イクシル氏はデリバティブマーケットに多大な影響力を持つ」と言われていた。
しかし、CDSの売買は、市場を通さない相対取引であり、参加者は限られた商いの薄い市場であったこと、CDSの裏付けとなる現物債市場の発展に伴い、JPモルガン・チェースがヘッジの再構築を迫られた結果、スワップの上にスワップを重ねる取引を行ってポジションの構造が複雑になり、1つのスワップの利益で別のスワップの損失を穴埋めできないリスクが高まった上に、再構築の結果肥大化したポジションの大きさ自体が、商いの薄い市場でたやすく取り扱える範囲を超えてしまったこと、JPモルガン・チェースのCDS市場における圧倒的な地位等の要因により、ヘッジファンドや他のトレーディング機関に標的とされ、一斉に逆のポジションを取り始め、ブルーノ・イクシル氏のポジションを踏み上げた結果、ブルーノ・イクシル氏は敗北し、ポジションが大きすぎたために、撤退も容易ではなく、更なる損失を拡大させ、最終的にJPモルガン・チェースは約20億ドル(約1600億円)の損失を被った。