ドロール報告書
- 英語
- Delors report
- 同意語
- 欧州の経済・通貨同盟に関する報告書
1989年4月に欧州委員会委員長ジャック・ドロール(Jacques Delors)の強いリーダーシップによってまとめられ、EC首脳会議で了承された報告書のことで、EMUを実現に向け3つの段階を経た具体的なスケジュールが初めて提案された。
第1段階は1990年7月より開始され、各国間の財政・経済政策協調の強化とEC加盟国全通貨のERMへの参加を実現し、ECUの民間利用に関する障害をすべて排除し、その利用を促進し、第2段階では、欧州中央銀行制度(ESCB)を設立し、ERMにおける変動幅を縮小し、第3段階では、欧州中央銀行(ECB)が統一的金融政策を実施し、対第三国為替介入の決定や公的準備の集中管理を行うとともに、為替相場を永久的に固定し、最終的に単一通貨を導入するというものであり、財政政策等マクロ経済政策の分野でのEC共通ルールや手続きに拘束力を持たせている。
ドロール報告書はEMU実現への道程を3段階のプロセスという形で明示した点では画期的なものであった半面、重要な事項に関してあいまいさを残す内容になっているという問題点があったが、各国間で相当な意見の相違があった当時の状況下では、ある程度妥協の産物にならざるを得ない事情もあった。